配信されてから見ようかなと思ったけど
ヴィジュアル的には配信されてから観てもいいかなとは思いましたが、結局は映画館で観てよかったです。
言わずもがなですが、映画館で観たときのほうが集中して観られるというのと、人物の繊細な心情を直に感じられた気がして思った以上に感情移入してしまった。
感想
インドの駅でチャイを売る少年が父親に連れられて観た映画をきっかけに映画に惹かれるようになるという話です。
ストーリー的にはリトル・ダンサーとかが近いのかな。閉塞的な田舎からやりたいことを見つけるといった大筋です。
劇中では具体的に映画を撮るというシーンではなく、映画という媒体に影響されて友達と映画を撮るごっこ遊びをしたりとか、盗んだフィルムを使って上映会をしたりといった映画の内容よりもフィルムを通して映画が上映されるといったことが如実に感じられる映画でした。
特に劇中では、映写機から放たれる光が重要な要素となり、暗いスクリーンの中で放つ光に主人公が魅力を感じるシーンが印象的でした。
映画の本筋とは関係ないところでも、廃墟から差し込む光だったり、鏡から反射する光など、少年時代の思い出が光の演出と共に進行していく感じは、舞台がインドという異国の地でありながらもどこか懐かしい気にさせる演出がすごく心にきました。
ストーリー
ストーリーとしては映画に惹かれるようになり、映写室で働くおっさんとなかよくなり、交流を深める一方で、友達と映画を撮るごっこ遊びをしたり、更にはエスカレートして列車で運ばれるフィルムを盗んで上映会したりする中で厳格なバラモンの父親が段々理解を示すようになる…といったわかりあえない親子愛も描いている映画でした。
インドというカオスな国で平気で盗みや不法侵入が行われる映画で倫理観もクソもないですが、物語としては美しい感じで心打たれました。
しかしながら、時代の進行と共に、フィルムと映写機を使った映画上映ではなく、プロジェクターを用いた映画上映になり、映写室で働くおっさんも已む無くクビになり、主人公自身も一つの時代の転換を感じるようになるといった展開に。
しかしながら、映画を観ることを反対していた父親が工面して主人公のやりたいことを応援するようになり、友人や映写室のおっさんに見守られながら列車に乗り込むといったラストは号泣しました。
色々と端折ってはいますが、インドの田舎の中でも時代の転換はあり、学校の先生曰く、カーストで人間が分かれるのではなく、英語のできる人間とそうでない人間で格差が生まれるといった要素が劇中の展開を左右する重要な要素でもあったりしてその狭間の中で生きる少年の物語でもありました。
主人公の父親や映写室のおっさんは英語を話せない人間のため、クローズドな環境の中で生きざるを得ない環境の中で暮らしている一方で、その中で主人公に理解を示し、外の街へ解き放つというのが涙腺に来る一要素だったなあと思いました。
演出
前述した通り、光の演出が素晴らしく、インドの静かな田舎のなかで拾ったガラス越しに見る世界や、フィルム越しに世界を見て自転車を走らせるなど、主人公の生きてる世界が主人公の視点を通すシーンがあったりなど、本筋とは直接関係は無いものの、主人公の影響されたものや心情理解を促進させるようなシーンが見ものでした。
セリフでわからせるというよりかはそういった光の演出が感覚で来るので、ある意味スピリチュアルな映画かもしれない。
劇中で再生される映画の音声も決して音質は良くないものの、逆にその掠れた感じの音声が時代を象徴させるような気がして、すごく心に染みてくる感じでした。