【映画感想】過去のドリワ映画の要素を持ちつつも「海外アニメあるある」を超える野生の島のロズ【ネタバレあり】

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野生の島のロズを観ました。正確には11月の映画祭で字幕版で鑑賞。2回目を吹き替え版試写会で観ました。そして執筆時点で通算5回目の状態ですがようやく整理ついたので色々と感想書けたらと思います

総括

野生の島のロズについてはストーリーについては通しで見たら一見シンプルな構成でロボットのロズとガンの子供のキラリの親子愛を中心に繰り広げる物語ですが、親子愛に限らず意図しているかは不明ですがどことなく過去のドリームワークス映画で使われてきた要素が随所に散りばめられ、それを一つの束としてまとめ上げ、物語が終息するという、一言で言うと「凄まじい」ことが100分でまとめ上げられていました。
具体的には人物が「怪物」呼ばわりされる(どことなく『シュレック』を思わせる)、種族を越えた交流、疑似親子、師弟モノ、主人公がハブられがち、成長譚がギュッと詰まっており、映画を見終わったあとには「一言では言い表せないけどとにかくすごいものを見た」感じになるなあと思いました。

ドリームワークス30周年作品という位置づけではあるものの、そういった要素を意図的に盛り込んだかは不明です。作品を観る前は、「ドリームワークス特有の黒い要素がなく、“あまりにもキレイなドリームワークス”すぎて逆に“らしさ”が無いのでは?」と思っていました。しかし、明確に生と死が隣り合わせの世界観については、個人的にすごくドリームワークスらしいなと思いました。
ストーリー序盤で色合いがキレイなカラスみたいな鳥が出てきたなーって思ったらロズの周りで捕食が始まり、さっきまで生きていた鳥が首だけの物体になるシーンが一瞬あったり、ロズが事故で斜面を滑り落ちたためにキラリの親鳥を殺してしまうところで物体と化した翼をロズが片手でつまみ上げるシーンとかは間接的な表現でありながらも「死」を明確に持ち出しているシーンで大人がみてもかなり衝撃的なシーンなんじゃないかなと思いました。
ちょっとうろ覚えですがドリームワークスの『アンツ』では、生と死が常に隣り合わせであることがショッキングな要素として描かれていましたが、ロズについてはその生と死の要素をうまくストーリーに落とし込んでいるなって思いました。

なんとなく自分がロズを観る前に思ったラストはロズが野生の島に定着してそこに生息している野生の島の動物の動きを模して本来のロボットとは異なる姿で生きるようになる…な「海外アニメあるある」なラストを想像していました。
確かに過去のドリームワークス映画でみたような要素が詰め込まれている意味も含めて「あるある」な部分もあります。
ところが、実際には「海外アニメあるある」を凌駕する締め方と、ポスターや予告からでは想像できないくらいの展開が次々と進んでいきます。「子どものガンが成長してロズも島で仲良く暮らしてめでたしな物語でしょ?」という安易な想像を全部ぶち壊す展開が100分ちょっとの映画に込められているので初見で観たときは個人的に要素が多すぎて逆に整理できないくらいに詰め込まれているなあと思いました。そういう意味で2回目、3回目と観ていったらところどころ映画に散りばめられている要素が伏線とは言わないまでも後で回収されるので繰り返し観るたびに発見と感動を味わえました。

ヴィジュアル的にもヴィジュアル的にも3DCGっぽさのない厚塗りの描写が没入感も高めてくれるし、気がついたらその独特な表現が当たり前だと思ってしまうくらいで壮大な自然の描写とその自然の描写を色付ける独特な色使いが自分の心を刺激しました。

ストーリー

ストーリー的には野生の島に流れ着いたロズと、親を失ったガンの子供・キラリの交流と変化、そしてロズを怪物呼ばわりする野生の動物たちが彼女の影響を受けて変化していくという2つの軸で主に書かれているのかなと思います。
ガンの子育てについてはプログラムされていないロズだがキラリの渡りのために奮闘し、親子愛を築いていく軸。
野生の動物たちが食うか食われるかの本能(プログラム)の中でお互いがお互い距離を取り合ってた中で時にはその食うか食われるかを一時的に取りやめ、本能を乗り越えて共に力を合わせる軸で書かれているのかなと思いました。そんなロズからの「休戦して」という「約束」が島を襲う危機である山火事を止めることに繋がるので、その2つの軸が終盤のシーンで同時進行で描かれ、ラストを迎えるシーンは壮大なBGMや独特な色使いも併せて描かれるので観る人の感情をすごく昂ぶらせるシーンでした。

ストーリー序盤でロズとキラリとキツネのチャッカリで建てた小屋が山火事で燃えてしまったものの、再建するときは島の動物と一緒に再建するので最初に建てられた小屋の意義とラストで再建された小屋の意義が異なっているのもポイントだと思いました。ロズが再建後に作成した看板に島の動物のイラストが入っているので、ラストで登場する小屋はただの寝泊まりの意味合いではない、本能を超えた先の象徴的な存在なんだなって思います。

個人的には生きるための「食うか食われるか」という本能の部分と本能を乗り越えた「共生」の部分の間の微かな可能性を探っているなと思いました。最近のアニメで取り上げられているテーマとして「共生」はあるものの、野生の島のロズでのテーマ性として「共生」そのものはあまり掲げられていないのかなと思いました。食べなかったら死んでしまうという原則はあるので。

ラストのシーンでヴォントラがロズを回収しようとするものの、ロズや島の動物たちが撃退する。しかしロズは再度回収が来るおそれがあり、島の動物たちを守るという理由に自ら回収されにいくシーンで「じゃあ素直に回収されれば良かったんじゃないか」とツッコミそうではありましたが、このロズの行動はプログラムされたから回収されるのではなく自分の意志で回収されにいく自発的な行為であるので結構意味合いが違ってくると思いました。また、記憶を消されたとしてもキラリのことは心で覚えているということをわかった上での回収なので、回収されるという行為は変わらないものの、「またロズの姿で会えるかもしれない」という未来の展望を残した上でタイトルロゴが出るシーンで涙しました。
直接ロズの姿は観れないものの、チャッカリが「アイツは仕事を完了させるからな」とロズがよく言うタスク処理についての言い方を引用しているなんともうまいなって思いました。

ストーリー序盤では「怪物」呼ばわりされているものの、ロズの頑張りによってか数少ない協力者がロズの子育てやキラリの飛行を手伝うようになるシーンは映画中盤でありながらも個人的に胸が熱くなるシーンだなあって思いました。ロズの頑張りが結果的に周りを動かすあたりは胸が熱くなるし、視聴者としてもロズやキラリを応援したくなるなーって思いました。

キャラとか

チャッカリ

野生の島のロズを語る上では欠かせない存在だなーって思いました。
序盤ではただロズを騙してキラリを食べようとしたりする存在でしたが、島の動物のことについて教えたり、島で生き抜くためのコツを伝授したりとロズやキラリと島の動物たちの間を取り持つ存在だなーって思いました。
そんな彼の変化が極寒の吹雪の小屋で野生の動物たちに説教するシーンは彼自身の変化が見られる象徴的なシーンでもあり、ロズやキラリと島の動物たちの間を取り持つ役割を担っているシーンでもあるため観るたびに心動かされるシーンだなーって思いました
生きるためには平気で人物を利用する彼が最後感情的にロズの別れを惜しむものの、その悲しみを埋めるのが元々食うか食われるかの関係性だった熊のソーンがカバーするのがなんともいいなーって思いました。
ずる賢いようなキャラではあるものの、時にはすごく甘えるような声で鳴くので彼自身がすごく愛に対して飢えているしコンプレックスを持ったキャラでもあるので観ていていろんな意味でズルいキャラだなーって思いました。彼自身にフォーカスを当てたときに元々孤独で愛を知らなかった彼がロズとの友情を経て変わっていき、救われる話でもあるので彼もまた第3の主人公なポジションなんだろうなって思う。

パドラー

芸術肌で己を貫くビーバーのパドラーがいわゆる変人でかなり癖のあるキャラクターだなーでしたが、劇中ではロズの義足を木の幹で作ったり、キラリの飛行の練習を手伝ったりとセリフ数は少ないもののかなり協力的な存在だなーって思いました。個人的にはそんな自己を貫くあたりはブレていなくて鑑賞を重ねていったらかなり好きになりました。
特にすごいのは序盤でただ大木を歯で削ろうとしているのが後の山火事を消し止めることに繋がるあたりは伏線回収としても度肝を抜かされるし、パドラーが影の功労者な存在だなーって思いました。
パドラー自身もかなり変な存在であるけどキラリを「変人野郎が」呼ばわりしていたりなツッコミどころも含めて結構愛しい存在だなあって思いました。

サンダーボルト先生

キラリの飛行を指南する師匠的な存在。見た目もいいが、登場からいきなり協力的であり個人的にはかなり美味しいところを持っていくやつだなーって思いました。
終盤でもロズを回収するために派遣された母艦についたレーザーの大砲を脚で動かして母艦を攻撃したりとかなり頭のキレることをしているなーと思いました。

割とどうでもいいが登場当初からかなり献身的であったサンダーボルト先生も冬の小屋のシーンでチャッカリの説教に巻き込まれているんだよなーって思った。

追記
グッズのメモ帳に「FALCON」とあったから英語名が「FALCON」なのかなーと思ったら違ったみたい。じゃあなんすか。彼はミスなんすか。

クビナガ

ロズにとってある意味師匠的な存在。ロズにとっては生き方についてのアドバイスをする師匠的な存在であり、肝の座った奥行きのある存在で個人的にはいいキャラだなーって思いました。
そんなキラリにとっては直接飛行の指導はしないものの、キラリの可能性を見出している存在として出てくるのでそんな彼の優しさや言葉が身にしみるなーって思いました。
個人的には吹き替えの声が千葉繁さんなのもすごく相性がいいし、達観な性格も含めて愛しくなる存在だったが、割とあっさり死んでしまうところは少し悲しい。クビナガ先生はある意味そんな野生の島の動物の変化を中盤の時系列で促す存在でもあったんだと思いたい。

ソーン

熊のソーンは当初は捕食者の王的な存在で描かれ、それこそロズに傷を負わせる存在ではあるものの、チャッカリの説教に心動かされ、真っ先に協力しては他の動物たちを先導する権威的な存在だなーと思いました。中盤まではロズたちに対して理解を示さない立場ではあったものの、極寒の吹雪の中でそのまま冬眠していたら死んでいたかもしれない中でロズに救われ、チャッカリの説教に心動かされたりと結構理解の早いキャラかなーと思いました。
山火事を止めるために大木を押し倒そうとするときの『島のため、ロズのためだ!』というセリフは、本能で生きていた島の動物たちの変化を象徴しているなーと思いました。
パワーもあるほうだとは思うので敵のロボットに対しても真っ先にぶつかっていたので、序盤ではロズを壊しかねない畏怖的な存在として描かれつつもその力が協力的な存在となるのでソーンの変化は本能を乗り越えた代表的な存在なんだろうなと思いました。

演出とか

  • とにかく過去にしようしたセリフのリフレインが多い。そういう意味で繰り返し鑑賞してここがこうつながっていたのかという発見がすごくある。
  • 「人生はうまくできている」といったクビナガの言葉をロズが継承したり、ロズがキラリに名前を呼ばせるために言った「こう呼んでください、ロズと」のセリフが心がキラリのことを覚えていることに繋がるのでそれに気づいたときに涙するしかなかった。
  • 序盤でチャッカリが物語を作ってキラリを眠らせようとするシーンが終盤のロズが船から記憶を取られそうになり、船から落ちるシーンとかなり重なっていることに気づいた。心がキラリのことを覚えているという嘘の物語が本当に実現したという意味で物語がただその場しのぎでの役割かと思ったらすごく意義のあるシーンだったのかと思う
  • 言うまでもなく背景の描き方が写実的ではなくどことなく手書き感のある描き方が終始続くので気がついたら目が慣れてしまっている
  • 花びらの描き方もよくみると点で描かれていたりと細部も含めて観察したくなる
  • 渡りのシーンでゴールデンゲートブリッジや街が沈んでいたりという世界観であることを知るあたりが個人的に一番好き。おそらく気候変動なので人類がもうそこには住めなくなってしまったであろう世界観は直接はストーリーに関係はしないものの、心を間違いなく動かせるシーンだよなあって思う。
  • ロズとキラリが寄り添うポスターからこんな世界観を想像できましたか??って思ってしまう。
  • 人類は滅んでいないものの、かつての街中で暮らすといった暮らし方はしていないというシーンにどことなくファンタジーとは程遠いものを感じてしまう。
  • 序盤で食われたカラスの色使いが黒と黒よりの青緑で描かれていたりと斬新な色使いが終始心を動かしてくる
  • 特にラストの山火事のシーンでは炎の色がマゼンタでありながらも炎という驚異的な存在を保っているので絵を描いている自分としても心動かされるなーと思う
  • 野生の動物達の後ろに山火事が燃え、その手前をほぼシルエットと化した野生の動物たちが駆け抜けるシーンがあり、光が当たるだけではない見せ方がドリームワークスの本気を感じさせてくれる
  • これは海外アニメ全般に言えることかもしれないが、光の当たり方で奥行き感が強調されるし、物語への没入感を高めさせてくれるなと思った。特にロズに関していえば独特の厚塗りっぽい描写が自然光があたったことによる美しさと没入感をより高めさせてくる
  • キラリとサンダーボルト先生のどことなくヒックとドラゴンのオマージュを思わせる飛行シーンが心を動かしてくる。特にサンダーボルト先生とキラリが空中で一旦フワッと飛行を止めて落ちようとするあたりがヒックとドラゴン2でもあったシーンだなと思いつつ、キラリの変化を象徴するシーンの一部でもあるのでただ見入ってしまう

おまけ

映画館

チケットの待ち列にぶら下がった垂れ幕。実をいうと地元の映画館にもあったので劇場のいたるところに宣伝物が用意されているのですごい。ディズニー映画でもここまでやってなかったと思いますよ

グッズ売り場。自分が見たときはロズのキーホルダーが売り切れだったので「ドリワグッズがまさかの売り切れ!!!!???」と思った。
今回はかなりグッズの種類絞ったなーと思いつつちゃんとグッズのほうも捌けているみたいで良かった…と思った。

ちなみに4DX版を鑑賞する前にスクリーン入場前のポスター(モニター)を撮ろうとしたところ、バイトの人達が「このモブキャラがかわいくてー」な話をしていたのが和んだ。
ちょっと時間がなくて一言言って会話を遮ってしまったが、ドリワオタクではない人が持つ作品に対しての印象を聞けたような気がして良かった。ちなみにモブキャラというのはアライグマみたい。

4DX版も体感したぞ

4DXは日本では初体験しましたが、特に印象的だったのは

  • 熊のソーンから逃げるシーン。一番揺れが激しかったと思う
  • スカンクのおならはどことなく香るものが漂ってきた
  • 山火事のシーンで首のあたりから温風が出てきたのが驚きだった 同時に水もかかったので温かいのと冷たいのがほぼ同時にくる感じだったかもしれない

ちなみにスクリーンXという両サイドの壁にも映像が投影される感じなので本来なら見えないシーンが少し確認できたり(少し荒いが)するので何回か鑑賞した上で楽しむならいいかもしれない。
ただ通常版とカメラワークが少し異なるのかなーと思った。

東京ミッドタウン日比谷

日比谷ミッドタウンでアートギャラリーやっているとのことだったので映画鑑賞した後に行きました。TOHOシネマズ日比谷のあるビルの1Fで堂々と展示していたので普段日陰者の存在であるドリワ作品がすごい取り上げられ方をしているのを見ると「えっこんな取り上げ方しちゃっていいんですか!!」と思ってしまうくらいだった。
アートギャラリーっていってもただ展示されているだけかなーって思ったら吹き抜けのフロアを突き抜けるくらい縦長の3種のバナーが吊り下げられていたりとかなりプロモーションに力入れてるなーって思いました

床から天井にかけてのアングル。感謝でしかない。

おそらく新宿のビルで展示されていたであろうロズの像。新宿だと観れなかったロズの後ろ姿が見られるのはありがたい

2階〜3階の吹き抜けを突き抜けるくらいでかいバナー。7〜10Mくらいはあったのかな?

3階からみた俯瞰の図。docomoとコラボして予告編で流れるシーンと手に持ったデバイスや足が振動する簡易的な4DXな機器を体感できるブースがあった。後からみたらそこそこ並んでいたので良かった。
ちなみにアンケートに答えると抽選に参加できる権利を持て、当たると非売品のトートバッグがもらえた。逆に手厚すぎて困惑する。無料でいいんですかね。

ガスト渋谷桜丘ビル店


あのクリス・サンダースも訪れたガスト渋谷桜丘店に行きました。全国のガストでコラボをやっているが、特に渋谷のガストは特別な装飾をしているということだったので行ってきました。ある意味クリス・サンダース監督への精神的なストーカーも兼ねている。

告知のページだけ見ると外のパネルだけがコラボポイントか?と思ったら動画を見るとわかるように額縁に劇中のシーンが飾られていたりするのでテンションが上がる

外のガラスから内部みたときの写真
ガラス戸のロゴと中のポスターが同じ画角に収まるようにパシャリ。ありがてぇ。。

動画中にも出てきたテープカットをした場所。結果的にストーカーしている

「みんなと過ごす野生の島を表現!」を食べた
普通に美味しかったです。プレートに刺さっているロズと島の動物たちのピックは持って帰りました。何かダイソーのグッズとか使ってキーホルダーにできないかな。

店員の胸につけられたアクリルバッジ
わがまま言って撮らせてもらった。たまたま撮ったのがクビナガのバッジだったので、普通にほしい…って思ってしまった。ありがクビナガ。

店内の壁にこれでもかなレベルで装飾

監督とかが座ったあたり
動画を見ると額縁で装飾された壁をバックに撮影していたのでそこもパシャリ。たまたま人のいない時間帯で良かった。
店内のいたるところが監督が歩いたという点で聖地と化している

福さんと監督のサイン

たまたま見つけた監督のサイン

動画では語られなかったけど鈴木福さんのサインとクリス・サンダース監督のサインが何気なく飾られていて結構ビビった。
監督単独のサインのほうはたまたま気がついたのでもしかしたら他にもあったのかもしれない。

おわり


「昔ここのガストでサンダーボルト先生単独の大型ステッカーがガラス戸に飾られていたときがあってのう…」

「またおじいちゃんガストとロズがコラボしていたときの話してるー!!」

おわり